僕のラーメンの原点「丸信」の中華

僕のラーメンの原点「丸信」の中華

 「おおきな木」がある伊奈波通は伊奈波神社の参道で、正月三が日は屋台店がずらりと並び、大変なにぎわいとなります。ちなみにこの伊奈波神社は 1900年以上もの歴史を誇る県内随一の神社であります。そんなわけでこの通りは昔からいろんなお店がありました。じつは僕は、現在おおきな木があるとこ ろで生まれて、小学校一年生までを過ごしたんですが、当時から今までずっと続いている店もいくつかあります。

 そんななかで一番なじみの店が、通りをはさんでおおきな木の向かい側にある大衆食堂「丸信」。多いときは週に一度くらいのわりで僕も通っていますが、ここは知る人ぞ知るB級グルメの店であります。メニューはといえば、中華そば380円、ワンタン390円、うどん300円、カレーライス480円、焼きそば430円といったラインナップで、一番高いメニューは630円のカツ丼。とにかく庶民の味方なのであります。

  店の広さは7~8人も入ればいっぱい。昼時はもちろん毎日満員。同時に出前の注文も多く入るので、なんとここのご主人、出前用バイクのヘルメットをかぶったままで調理をしています。

  思えばいろんなお客様をこの店に連れてきました。絵本作家のスズキコージさんはここの天丼がお気に入りで、東京の下町の味がすると絶賛していました。他にも当店のイベントで招いた方々がいろいろ訪れていますが、まずみんなびっくりするのが、店の狭さと値段の安さ。ヘルメット姿で調理をするご主人。そして、かつてこの店にはネコが住んでいたのです。7、8年前に亡くなってしまったらしいんですが、当時はこの狭い店の中で食べているお客さんの間をネコがうろちょろしていたり、石油ストーブの前で丸くなっていたりしたのです。

 ラーメン屋乱立の今日この頃ですが、僕のラーメンの原点はここにあります。いや、正確に言えば、ラーメンではなく、中華そばです。子どものころは支那そばでした。濃い醤油スープに縮れ麺。チャーシューとネギが載っただけのじつにシンプルな中華です。裏メニューに「半チャン中華」というのがあって、中華と小盛チャーハンの組み合わせで600円也。また、ラーメンと同じ麺を使った焼きそばは独特で、僕の焼きそばの原点です。カツ丼はこれまたすごくて、でっかいトンカツを二段に重ねて強引にどんぶりに載せているという代物で、ここのカツ丼ファンも岐阜市内には多く存在します。

  先日ここで遅いお昼を食べていたら、テレビで、お笑いタレントたちが居酒屋の人気メニューベストテンを当てるという「お試しか!」という番組をやっていたので、丸信ご夫妻に、ここの人気ベストワンは何ですかと尋ねたら、「何だろうねー、ハェハェ」と笑ってごまかされてしまいました。

  さらにご主人にインタビュー(?)をして分かったことなんですが、丸信の歴史はじつに古く、今のご主人のお父さんが昭和初期に始めた屋台店が始まりで、その後今の場所にちゃんと店を構えて70年になるとか。

  思えば僕の幼少期は伊奈波通は全盛期でした。丸信の他にもいくつかの店が僕の記憶に残っています。屋台の天ぷら屋、夜店のカルメ焼き。そして現在の「イチダ洋菓子店」は昔はアイスクリーム屋さんで、モナカにはさんだ乳脂肪分ほとんどゼロではないかと思われるあの昭和の味は僕のアイスクリームの原点です。そのイチダさん、今では人気のケーキ屋さん。ですが、あのアイスが食べられないのは僕としてはちょっと残念かも。


おおきな木 杉山三四郎

おたより、ご質問など