自由にしていいよと言われても...

 

 「どうぞ自由に絵を描いてください」と言われて描ける人はどれぐらいいらっしゃるでしょうか。仕上がりの出来など気にしない小さな子どもなら苦もなく自分のワールドで描き始めるかも知れませんが、ちょっと気にし始めるお年頃になると考えすぎてなかなか描けなくなってしまうことが往々にしてあるものです。

 おおきな木で開いている「キミ子方式」なる絵画教室は、そんな子どもたちや大人の方に魔法のようなヒントを与えてくれる描画法です。写生をするときに、普通は全体の形をとらえて画用紙に輪郭をとりそれに絵の具を塗っていくという作業になりますが、キミ子方式では、輪郭はとらず下書きもせずにモデルの一点だけを見て、そこからいきなり絵の具を塗り始めていきます。詳しいことは一度受講していただいて実感してもらうしかないのですが、ちょっとした発想の転換で絵が苦手だと思っていた人も描けてしまうんですね。

 では、絵本についてはどうでしょう。何を選んだらいいのか全く分からないというお客様に、「ご自由にお選びください」と丸投げしてしてしまうのは絵本専門店に足を運んでいただいているお客様に対して、それは冷たい言い方でしょうね。もちろん基本は何を選ぼうが自由です。どんな絵本が「よい絵本」なのかなど気にせずに自分の好みで選べばいいのです。でも、子どもにどんな本が受けるのか分からないとか、ましてや誰かにプレゼントをするといった場合など、やはり何を選んだらいいのか分からないのも仕方ありません。

 おおきな木では数年前から年間ベストセラーを公開するようになったのですが、絵本初心者のための絵本選びにひょっとしたら役立つかもといった気持ちで始めました。そうしたら意外と参考にされる方があることに遅まきながら気が付いたんですね。売れる絵本イコールよい絵本とは限りませんが、ランキングを見てみると、子どもに受ける本がずらっと並んでいます。それはたぶん我々スタッフが、大人目線ではなく子ども目線で選書をして皆さんにお勧めしてきた結果でもあると思います。まあ、多分に好き嫌いも反映されてはいるとは思いますが…。

 さて、おおきな木では野外塾という活動もずっと続けてきましたが、これも基本は自由。時間割もなければ課題もない。自然を思いっきり楽しめる場所に連れて行って、そこに子どもを放つ。言ってみれば「放し飼い」です。でも、これも丸投げしているわけではありません。自然を楽しむためのいろんな入口を子どもや同伴の親御さんたちに教えています。おいしく食べられる山菜や木の実を教えたり、珍しい魚や虫たちがいるところを教えたり、ロープ遊びを教えたり…、とにかく子どもが喜びそうなしかけをあれこれ用意しています。でも、これは課題ではないので、他にやりたいことがいっぱいある子たちは「自由」を満喫しています。

 21年にわたりこの活動を続けてきていつも思うのは、言うなれば「何にもない」自然の中でも子どもたちはほんとうによく遊ぶなあということです。退屈している子はほとんどいません。そんな活動を続けることができたのは、「時間」「空間」「仲間」という三つの「間」を用意してきたからだと思います。自由な「子どもの時間」を確保すること、魅力的な自然環境があること、そしてそれを共有する仲間がいること。この三つは子どもが生き生きと育つための三大要素なんじゃないかと、そんな思いで続けてきました。

おおきな木 杉山三四郎

コメント

「人として、楽しく生きる」ための三大要素。なるほど。いいですねえ。一郎さんの名言にもいろいろ助けられてきましたよ。

ステキな文章です。さすが!
始まりがあって、トコトコ進んでいきながら、今がある。
始めた時に大切にしている事を、ブレずに続けて来た証ですね。
三つの「間」、それは「人として、楽しく生きる」ための三大要素かもしれません。

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