現憲法が180度変わってしまったら...

 

 今さらという感じがしないでもありませんが、皆さんは日本国憲法の三原則とは何かご存じですか? そうですね。1. 国民主権 2. 戦争放棄 3. 基本的人権の尊重 の三つですね。戦後に生まれた日本国民は、小学校や中学校で民主主義について学び、この三つの原則がいかに大事なことであるかを教えられました。

 では、皆さんは今から4年前に自民党が作った「憲法改正草案」はご存じでしょうか? その存在については知っていても、中味までは知らない方がほとんどではないかと思います。今、僕の手元には『あたらしい憲法草案のはなし』(自民党の憲法改正草案を爆発的にひろめる有志連合著/太郎次郎社エディタス)という本があります。自民党の改正草案を分かりやすく解説した本で、改憲に賛成か反対かの姿勢は示さず、この草案を作った人たちの熱い思いをそのまま伝えています。今、なぜ改憲が必要なのか、なるほどと思えるような部分もあるかも知れません。しかし、読み進んでいくと、改正草案は現行憲法の根幹を180度ひっくり返すような内容になっていることがよく分かります。

 改正草案の三原則は、1. 国民主権の縮小 2. 戦争放棄の放棄 3. 基本的人権の制限。今の三原則は都合が悪くなってきたというわけです。一体誰にとって…? それは、日本国民ではなくて国家権力にとって都合が悪いということでしょう。国民が自由にものを言っていては、権力者にとっては邪魔だからです。

 現憲法では、個人の自由を制限する条件として、「公共の福祉に反しない限り」という文言があります。これは個人の権利の行使が他の人の権利を奪ってはいけないという意味ですが、これが自民党草案では、「公益及び公の秩序に反してはならない」となっています。公益とは社会の利益。つまり国の利益ですね。そして、公の秩序というのは国が決めた決まりということであり、分かりやすく言えば、国民は国が決めたことに逆らってはいけないと言っているわけです。そもそも憲法というのは、国家権力の暴走に国民が巻き込まれないように国家権力を縛るために作られたものです。ところが、自民党草案ではこれも逆転していて、国家が国民を縛る形になっているのが分かります。

 先日行われた参議院選挙ですが、またもや自公の与党が勝利を得、これにおおさか維新などを加えた改憲勢力が参議院でも3分の2を占めるという結果になってしまいました。現憲法が大きく変えられてしまうかもしれないという重要な選挙だったと思うのですが、安倍政権はまたもやこれを争点にはせず、アベノミクスがあたかも実効を得ているかのごとき経済政策を強調して票を取りました。前回も前々回も同じ手口で、争点にしなかった秘密保護法や安保関連法を成立させてしまったのです。三度目はもう騙されないぞと国民は判断するのではという淡い期待もありましたが、結果はこのざまでした。

 ほとんどのマスコミが、与党が憲法改正を発議できる3分の2を得るかどうかが注目だと報道していましたが、驚くことに、事前のアンケートでこの「3分の2」の意味を理解している有権者は2割にも満たなかったということです。そして相変わらず投票率は低迷。国民の無知・無関心が今の独裁政権を支えているんですね。自民党改憲草案の中味を少しでも知っていれば、これに賛成する国民などほとんどいないのではないかと思うのですが…。恐ろしい時代がやってきました。

おおきな木 杉山三四郎

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