ナマケモノのいる森で
ナマケモノのいる森で
アヌック・ボワロベールとルイ・リゴー しかけ
ソフィー・ストラディ ぶん
森がきりたおされ、荒野にまた種をまく…。
なんども絵になり、ことばになり、くりかえし本となったテーマだとおもいます。
このしかけ絵本も、言っていることはなにも目新しいことはないのだけれど、木が最後の一本になってしまい、それが小さくとも雄々しくすっくと立ち、立派に影までおとしているのを見たとき、なんだか心の奥がざわっとしました。
そして、もっと小さな、希望の「芽」にも、無数の小さな影…。
この星の上で起きていることの、「リアルなかけら」。
思ってみれば、紙も木からできているわけですから、その分身ともいえるのですよね。
とびだす絵本はたんにその技術の高さで驚かせたり、ちいさな子供をたのしませたりするだけでなく、こんなふうにメッセージを語らせることもできるのだと気づきました。
本そのものはとてもスタイリッシュで、うつくしいです。
発行元のアノニマスタジオの理念は、
「遠くに住む友人から届いた手紙のように、何度も読み返したくなる本、その本があるだけで、自分の部屋があたたかく輝いて思えるような本を」。
発行する人たちの思いがつまった本が、どんどんかたちとなって増えていくとうれしいな。
スタッフ えんや
ネジマキ草と銅の城
ネジマキ草と銅の城
パウル・ビーヘル 作
村上 勉 絵
この本は、装丁に惹かれて手にしました。本棚に並べておきたい、そう思わせる装丁。気になって奥付を見てみると、装丁家は名久井直子さん。他にも魅力的な装丁をたくさん手がけていらっしゃる方でした。また、絵はなじみ深い村上勉さん。少しレトロな雰囲気の絵が、物語にぴったりです。装丁と表紙の絵で、本を開く前から心を持って行かれました。
物語は、古い城に家来のノウサギとたった2人で住んでいるマンソレイン王の心臓が今にも止まりそうなところから始まります。まじない師が薬となるネジマキ草を手に入れてくるまで王の命を繋ぐため、様々な動物たちが城を訪れては王に物語を語って聞かせます。
長い長い物語のなかに、動物たちが語る小さな物語が積み重ねられていきます。小さな物語を毎日一つずつ、時々は二つ、三つ、そんな読み方もいいな、と思いました。でも、最後に語られる物語は、少し長くてもひと息に読みたくなるに違いありません。
作者のパウル・ビーヘルは枠物語の名手と言われています。枠物語と呼ばれる構造を十分に楽しむことができ、読み終わった時には達成感や満足感とともに、その巧みな作りにため息がこぼれます。
スタッフ みか
おおきな木のおはなし
おおきな木のおはなし
メアリ・ニューウェル・デパルマ 作・絵
木があります。長い時間がたって、木は老いていきます。命が生まれてから過ぎてゆく時間を重くなく、でも軽すぎず、明るく優しい絵と穏やかな文章でさらりと描いた絵本。激しい悲しみや心躍る楽しさはありません。ただ、自然な流れであることを改めて思い返し、そして、ああ、やっぱりそうなんだと思う。心地よい安心感がそこにはありました。
そう、それはまるで子守歌のような。
スタッフ みか
しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん
「しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん」こどものとも 年少版 2010年2月号
高野文子 作・絵
ふとんも眠ることも大好き。
フカフカのなかで、巣穴のようにしてくるまっていると、安全に守られているようなかんじがする。そんな「ふとんたち」に祈りをささげる?ちょっとヘンな本です。
高野文子の漫画のファンとしては、これをみつけたときには、「おおっ!」とすぐにとびつきました。
あいもかわらぬ、洒脱で、粋な、描線とことば…。背を向けた子供の、うなじやおしり、足の裏たちにまで、妙にいとおしい風情があります。
「しきぶとんさん しきぶとんさん
あさまで ひとつ おたのみします」
「まかせろ まかせろ おれにまかせろ…」
ふとんさんにお願いする、朝までの安らかな時間。おねしょ、こわい夢、寝ているうちにもいろいろと手強いハードルがあるんだろうなあ、子供には…。
でも、うちの子は、「まかせろまかせろ…」と口をきくふとんたちのほうがよほど怖いらしく、「ほんとはこんなこといわないよね!」とわたしに確かめながら、おそるおそる読んでいます。
「こどものとも」は、よほど人気があると立派なハードカバーとなって再版されるのですが、そうでないものは、在庫のみで、書店から消えてしまいます。
「これは」と思うものは、ぜひ手にいれておきたいところです。
スタッフ えんや
ドローセルマイアーの人形劇場
ドローセルマイアーの人形劇場
斉藤 洋 作
人形劇と聞くだけで、幻想的な、どこか別の世界へ誘われてしまいそうな気持ちになるのは私だけでしょうか。この本もそんな思いを抱いて手にしました。最初にこの本の題名を見たのは、同じ斉藤洋さん作の「アルフレートの時計台」という本のあとがきでした。「アルフレートの時計台」を読んだ私は、そのあとがきで、先に書かれた「ドローセルマイアー人形劇場」と「アルフレートの時計台」の一部がつながっていることを知りました。そして「ドローセルマイアー人形劇場」と出会うのです。
部屋の中で所狭しと置かれていた人形たちも、幕が上がり、ドローセルマイアー氏の手にかかれば、まるで生きているかのように物語を演じ始めます。運命的にその世界に足を踏み入れたエルンストは、夢のような現実のようなあいまいな環境に身を置くことになります。
迷い見失っている時、それは運命に導かれ、行くべき道に迷い込んでいるのかも知れません。
スタッフ みか
最後だとわかっていたなら
最後だとわかっていたなら
ノーマ コーネット マレック 作
あなたが眠りにつくのを見るのが
最後だとわかっていたら
わたしは
もっとちゃんとカバーをかけて
神様にその魂を守ってくださるように
祈っただろう
「Tomorrow Never Comes」という一編の詩が、1989年、息子を失ったひとりのアメリカ人女性によって書かれました。この詩は、9-11のテロの後、チェーンメールとなって広がっていきました。決して長くはない詩が、今日という日、今という瞬間が、ほんとうに「今」にしかないのだということを思い出させてくれます。ことばとして伝えることで、つながっていく、なにか。とてもまぶしくて、あたたかいもの…。
スタッフ えんや
ゆきひらの話
ゆきひらの話
安房直子 作
田中清代 絵
こんなに寒い時に、とてもあたたかいお話に出会うことができました。
ゆきひら、というお鍋があります。
風邪を引いて寝込んでしまったおばあさんと、戸棚の中に長い間しまってあったゆきひら鍋のお話。
ふっふとゆきひらの口からしろいゆげがのぼります。空からはほろほろと雪が舞います。やさしい擬音が心地よく胸の中に染みてきます。
ゆげのあたたかさと、りんごがコトコト煮える甘い香りで心の中がじんわりと満たされていきます。
小学生くらいからの読み物ですが、大人もじっくり味わいたい、そんな本です。
スタッフ みか
土曜日のお裁縫
土曜日のお裁縫
堀川 波 作
絵本作家・堀川波さんによる、手作りの本。
眺めているだけで、習ったことがなくても気負わず楽しく手作りができそうな気持ちになります。こんなのがあったらいいなと思うけれど、いざ探してみると具体的過ぎて理想的なものが売っていない時。かわいい布やリボン、ボタンを買った時。構えずに軽い気持ちで針と糸とお気に入りの布を手にできるようになりました。私はミシンを持っていないので、全て手縫い。厚い生地や大物はちょっと逃げ腰ですが、小物ならばチクチク手で縫うのも楽しい時間のひとつ。
イラストや作品の写真と文章に作り方がついているといった感じの構成なので、特に手作りがしたいわけではない時にも、かわいい作品や手作り小物にまつわる堀川さんの文章とイラストに癒されます。実際私も、何かを作るためにこの本を開くのではなく、ゆっくり眺めて楽しむために開くことのほうが多いです。「こんどこんなの作ってみようかなあ」「これがあったらカワイイなあ」「そういえば、あの布どこいったっけ…」いろいろなことを考えながらページをめくり、作ることを想像してはワクワクする日々です。
スタッフ みか
細いワイヤーの上、ほくは自由だった
綱渡りの男
モーディカイ・ガースティン 作
川本三郎 訳
世界貿易センタービルのあいだに綱をわたし、綱渡りをする…。
歩道橋も渡れないほど高所が苦手なわたしには想像するだにおそろしいのですが、マンハッタンで1974年にあった本当の話です。
男の名はフィリップ・プティ。大道芸人。
どうしてそんなことをしたくなったのだろう?
綱渡りしているときは、どんな気分なの?
好奇心にかられて、映画の「マン・オン・ワイアー」も観ましたが……やっぱりわかりません。
子どもが「あれやってみたい!」と思って、本当にやってみる。ただそれと同じで。
とはいえ、地上400メートルの綱を渡る実際の映像は、鳥肌が立つほど美しく、神秘的でした。
ふたつのビルには逮捕しにきた鈴なりの警官たち。でも綱の上までは誰も追いかけてはきません。
そうして一時間も彼は細い綱のうえで踊ったり、寝転がったりするのです。
自分が冒険できなくなっているとき、なにかしたいんだけれども怖いと感じているときにこの絵本を手にとります。
彼の居場所はたまたま地上400メートルの綱の上だったけれど、それぞれの人が、それぞれのやり方で、そんな場所をもつことができる。わたしにとって、小さな勇気をあたえてくれる絵本です。
スタッフ えんや
三人の旅人たち--国語の教科書が好きでした。
三人の旅人たち
ジョーン・エイキン 作
ヤン・ピアンコフスキー 絵
小学生の頃、国語の教科書に載っていたお話です。教科書に載っているいろいろなお話が好きで何度も読み返したものですが、これは特にお気に入りでした。授業中にも教科書を前に戻っては読んでいました。お話も好きでしたが、小さな挿絵も好きでした。結局これが収録されている光村ライブラリー第14巻と、作者であるジョーン・エイキンの短編集、岩波書店「しずくの首飾り」という本の両方を購入し、挿絵が当時のままであることに喜びを感じながら今も楽しんでいます。(光村ライブラリー及びしずくの首飾りはお取り寄せになります。すみません…。)
「砂漠」という名前の駅に3人の男が住み、駅員として働いています。ほとんど客が降りることのないその駅で3人は変わり映えのしない毎日を送っていましたが、ある時それぞれ旅に出かけます。それぞれの行き先は?そして持ち帰ってきたものは?彼らがお互いに旅の話をし合えば、私の脳裏にもその情景がこと細かに描き出されます。
国語の教科書だけに、授業ではきっと、三人の心情や得たものなどを感想として持たなければならなかったのでしょうが、ただ単純に三人の旅の話が好きでした。
スタッフ みか










