みどりのスキップ

みどりのスキップ

 

みどりのスキップ

安房直子 作
出久根育 絵

 

 

季節が過ぎてしまいましたが、しゃらしゃら鳴る葉ずれの音とともに緑の葉がキラキラ光る頃よりほんの少し前のお話。

フクロウは花かげちゃんに恋していたのでしょうか。

桜の時期には誰もが少なからず昂揚した気持ちになっているように思います。膨らみきった蕾は赤く、満開の花は白く輝く。そして、徐々に光が褪せていくのを、私たちはなんとなく寂しいような、名残惜しいような気持ちを胸の奥の隅っこで感じながら見過ごして行くのです。やがて桜の木々にキラキラ緑が煌めくようになると胸の隅っこのさみしい気持ちはすっかりと忘れ去り、抜けるような青空に目を細めます。

そんな、季節の流れをフクロウはただひたすら花かげちゃんのために見守ります。否、睨みつけ、抵抗しつづけます。花かげちゃんを守るために。ただそれだけのために。無情にも疲れ切ったフクロウには睡魔が忍び寄ります。何かが近づいてくるのに、足音が聞こえてくるのに、どんなに頑張っても抗えないほどの睡魔。とうとう意識を手放したフクロウが次に目を開けた時見たものは。フクロウは悲しかったのでしょうか。悔しかったでしょうか。自分を責めるのでしょうか。それとも。

 

スタッフ みか

 


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火よう日のごちそうはひきがえる

火よう日のごちそうはひきがえる

火よう日のごちそうはひきがえる

ラッセル・E・エリクソン 作
ローレンス・D・フィオリ 画
佐藤凉子 訳

 

 

大好きで、何度読み返しても胸の奥をくすぐられる物語。

 

ひきがえるウォートンがみみずくにつかまってしまいます。みみずくはウォートンを特別な日のごちそうにすることにします。その特別な日が火曜日で、みみずくの誕生日。火曜日までの5日間がウォートンにとって勝負であり、この物語の全てとなります。

 

ウォートンは、モートンというひきがえると一緒にすんでいます。2ひきは兄弟。掃除担当のウォートンと料理担当のモートン。2ひきの生活は美味しい料理ときれいな家でとても心地よいものなのでしょう。ウォートンはモートンのつくる料理がとてもおいしいのだと、よく言っています。たしかにウォートンが食べている食事やデザートやお茶はどれもこれもおいしそうに描かれています。…が、私は全然食べたいと思えません。

 

食べ物の描写もさることながら、ウォートンの身に確実に迫ってくる危機とウォートンの心情、そして記念日を待つみみずくの心情。1匹と1羽の気持ちの微妙な変化になんだかうずうずします。

 

読者としては、天敵と同居しながら食べられる日までを過ごすウォートンをハラハラしながら見守りつつ、みみずくの態度も気になる。この状況から目を離すことができず、一息に読み終えてしまえば、いつのまにかホッとあたたかい気持ちになっています。

 

こちらの本は、ひきがえるとんだ大冒険シリーズの第1作目ですが、現在は改訳新版として7作目まで出版されています。

 

スタッフ みか

 


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毛皮ひめ

毛皮ひめ

毛皮ひめ

シャーロット・ハック 文
アニタ・ローベル 絵
松井るり子 訳

 

 

お姫様が出てくる昔話の一つですが、このお話と出会った時、獣と化したお姫様が出てきそうなタイトルに興味と少しの恐ろしさを感じました。最初の出会いはグリム童話の中の一遍。タイトルは「毛むくじゃら姫」でした。お話の中で忘れられないことばがあります。『とろりとあまいパン入りスープ』ということば。お姫様が作ったスープの描写です。私にはとても魅力的なことばに聞こえ、その場面にまで到達するためにそれまでのお話を読んでいるような時もありました。それほど、くり返し読んだお話の一つ。『とろりとあまいパン入りスープ』なんて、作り方を教えてください、と思ったものです。何とか体感したくて、コーンスープに細かくちぎった食パンを入れてみたりしたのは、もう昔の話。

やがて、このお話は他にも「千枚皮」などいろいろな呼ばれ方があることを知りました。

絵本はないかと探してみたところ、よく似た昔話である「毛皮ひめ」の絵本と出会うことに。アニタ・ローベルによるお姫様の金色の髪や3枚のドレスが美しく、最後のケーキもすてきです。私があこがれたスープの表現はありませんが、ドレスはこの世のものとも思えないほど美しいものを想像してしまいます。太陽のような金、月のような銀、星のようにきらめくドレスの3枚。どれほどに神々しくどれほどに上品でどれほどにかわいらしいのかと。王さまの心を虜にした美味しいスープと美しいドレス、そしてお姫様は、何度読んでも、いつ読んでも、鮮明に蘇り私をうっとりとさせるのです。

 

しかし…残念ながら、この絵本は現在絶版となってしまったようです。

 

スタッフ みか

 


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かえるのエルタ

かえるのエルタ

かえるのエルタ

中川李枝子 さく
大村百合子 え

 

 

1964年初版の古い本です。わたしが小学生低学年の頃、何度も何度もよみかえした思い出の一冊。

 

なにがあれほど自分をひきつけたのか、今もってわからない。ただ読み返していると、なにか体の奥深くにうめこまれていた感覚のようなものが、呼び覚まされるのです。

草いきれの中におちている、エルタの赤い目がピカリと光ったり。

うたえみどりのしま、という言葉をみただけで、ざわざわとなにかを思い出しそうになったり。

わがままでオテンバで、今となってはそれもチャーミングに見える、くみこやドレミ。当時はだいきらいだったけど。

らいおんみどり、というキャベツばかり食べるライオンの存在感も、しっかり重みをもって自分の中に残っていたり。みんながいやがるのに、ババヌキばかりさせたがる(笑)

 

子ども時代に、大好きな一冊ができる、というのは一生の宝物。

そのとき刷り込まれた「なにか」(としかいいようがない)は、記憶というより、からだがおぼえていて、エルタの光る赤い目は、ガラスやプラスチックのような質感をもってちゃんとイメージされてくるし、子どものころの感覚というものは、なかなかあなどれないものです。

小さかったわたしが、エンディングでわがままなドレミと結婚してしまったエルタにはがゆい思いをした記憶がありますが、今みれば、あんなにいがみ合っていたことじたい、二人は惹きあってたんだな、なんて思ってみたり。ああ、年をとった!(笑)

 

というわけで、今回はなつかしさということで選んでみました。

みなさんにも、そんな一冊がありますように。

そして、できることなら、もう一度出会い直すチャンスがありますように。

 

スタッフ なおこ

 


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ただのしろいふうとう こどものとも12月より

ただのしろいふうとう こどものとも12月より

ただのしろいふうとう
こどものとも12月

殿内真帆 作

 

「ただのしろいふうとう」
妙に惹かれるタイトル。ただのしろいふうとう。なんだかいい。

しろいふうとうは、自分がなんのきらびやかさもなく、自慢もなく、なんの変哲もない白い封筒であることにがっかりしていた。見た目ばっかり気にして、うらやましがったりくやしがったり。でも大きな書類封筒に、「きみの手紙は誰が書いたの」ときかれ、中の手紙をはじめてみることに。そこには、おばあちゃんのために女の子が一生懸命描いた大きな赤い花の絵。それをみて、白い封筒は胸がいっぱいになった。

それだけのお話なのだけれど、ふと思う。わたしたちも、これと同じじゃないかな、と。肩書きやお金や役割や、名前やなにやら全部とりさってしまえば、みんなただの白い封筒。そして自分が中になにを運んでいるのかは、決して自分では分からないのだ。そうして、知らず贈り物を届け続けている。

ただのしろいふうとう。
こんなふうに、わたしも誰かに大きくて赤い花を届けられますように。

スタッフ なおこ


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クロックワークスリー マコーリー公園の秘密と三つの宝物

クロックワークスリー マコーリー公園の秘密と三つの宝物

クロックワークスリー
マコーリー公園の秘密と三つの宝物

マシュー・カービー 作
平澤朋子 絵
石崎洋司 訳

 

最初は装丁とタイトル。本選びは何がきっかけになるのかわかりません。好きな作家さんだったり、人に勧められたり。でも今回はこの2つでした。歯車がちりばめられた表紙は、何かが噛み合ってギシギシと動きだしそうで見過ごすことができません。

 

3人の子どもたちのそれぞれの生活から話は始まります。1人ずつ順番に紹介するように、それぞれを取り巻く状況や環境や人間関係が描かれていきます。そして、やがてその3人が関わりを持ち始めると物語が急速に動き始めます。不思議な緑のバイオリンや自動人形。柊の彫刻。心優しい大人や酷い大人。解き明かさなければならない謎が次々と現れ、500ページ超えのボリュームも大したことではありませんでした。

 

この作者の他の本が読みたいと思い、奥付の作者欄を見たところ、この本がデビュー作でした。そこで、その後に何か出ていないかと検索をしてみましたが、現在のところ邦訳はこの1冊だけ。読めもしない作者のサイトに行ってみると、その後は何冊か書かれているようです。小説がスラスラ読めるくらいの英語力があればなあ…。 

 

スタッフ みか


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おうさまのおひっこし

おうさまのおひっこし

おうさまのおひっこし

牡丹靖佳 作

 

はずかしがりやのおうさまとあわてんぼうのおともたちのお話。

こまっているものがいるとなにかしてあげたくなる、やさしくて思いやりのあるおうさまは、なにかしてあげたくても恥ずかしいのでおともたちにうまく命令できません。一方のおともたちは、そんなおうさまの命令を勘違いばかりしています。

この”おひっこし”も、おうさまの思いやりとおともたちの勘違いが始まり。

うすいベージュの表紙や紙面がレトロな風合いをかもしだしていますが、2012年5月が初版。絵は風変わりですが美しく、書体がさらに雰囲気を作っています。見返しも変わっているなあ、と思いなんとなくカバーをはずしてみたら、カバーと表紙が全然違う!牡丹靖佳さんとはどういう方なのか調べずにはいられませんでした。絵本は雑誌「こどものとも」などもう出版されていないものが数冊。個展など精力的に活動されているアーティストでした。

絵も文字も装丁も惹かれることばかりですが、お話もまた魅力的です。おともたちの勘違いは度を超えていて次々と奇抜なことをしでかしますが、おうさまのやさしさでホンワリとまとまってしまいます。たまらなくかわいくて、あったかい。最後のページは胸がきゅーんとしました。

 

スタッフ みか


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たのしい川べ

たのしい川べ

たのしい川べ

ケネス・グレーアム 作
石井桃子 訳

 

数年前イギリスに滞在していたとき、「イギリスのこどもはみんなこれを読んでる」と教えてもらったのが、この本。そのときまでまったく知らなかったのだけれど、それ以来ずっと気にかかっていました。

ストーリーを楽しむというよりは、ひとつの文ごとに甘くしみわたるあたたかいもの…それは友情であったり、気遣いであったり、森の気配であったり、そういう言葉にならない「なにか」なのですが、それをすこしずつ味わいながら、ゆっくりと川をくだるように読むのがぴったりくるみたいです。

ケネスがじぶんの子どもに語り聴かせた、たったひとつの子ども向けの物語。多忙なビジネスマンだった彼は、休暇は田園で、あるいは森や川辺で、ただなにも考えず、ひたりきりになりたかったようです。銀行を退職したあとも、まわりからどれほどすすめられても本は書かなかったとのこと。
「私はポンプでなく、泉でありたい。有名になってふりまわされるのもいやだし、お天気のいい日にはあまりに外が美しくて、机には座っていられない。」

100年前に書かれた物語。今どきの読み物にはない、やすらぎとゆったり感があります。この本を読んでいるあいだは、忙しい日常も忘れてすっかりイギリスの森の住人になっていました。しめった土のにおい、小さな生き物たちのぴくぴくふるえるヒゲや、あたたかい食べもの、冒険でびしょぬれになった体を、暖炉の前でかわかす喜び…。

裁判なども出てくるので、小学4年生くらいからが適当かと思います。400ページ近くあるので、けっこうな読み応えです。プーさんで有名なシェパードがさし絵をつけています。

 

スタッフ えんや


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チーター大セール

チーター大セール

チーター大セール

高畠那生 作

 

どこかの外国のような街並み。オシャレなお店が建ち並ぶ街の一角でチーターがお店番。そのチーターの表情豊かなこと。ひまでひまでぼんやりしている顔。思いも寄らないできごとにびっくりあんぐりの顔。ちょっと得意げな顔。すごく得意げな顔。動揺した顔。落ち着かない顔…。チーターの心の声まで聞こえてきそう。読んでいると絵本に書いていないことまでチーターに言わせてしまったり。

おきゃくさんがやってきて、
「あなたのくろいもようをくださいな」
「なっなんと!」(とは言わなかったけれど、そう言っているような顔に見えるのですもの。)
チーターの黒い模様は売れるのか。チーターは売っちゃうのか。売ったらチーターはどうなるのか。買った模様をおきゃくさんはどうするのか…。チーターがどんどん予想外の方向へ。

街を行く個性豊かな人々をじっくり眺めるのも楽しみのひとつ。

面白い絵本だなあとは思っていたのですが、出版されたばかりのころにおはなし会で読む機会があり、小学校低学年くらいの男の子がとてもよろこんでくれて、私もこの絵本がもっと好きになりました。

スタッフ みか


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穴

ルイス・サッカー 作
幸田敦子 訳

 

太っちょ少年、スタンリー・イェルナッツは、「まずいときに、まずいところに」居合わせたばっかりに、少年更生のため…とは名ばかりの、奇妙な施設「グリーン・レイク・キャンプ」に送りこまれる。スタンリーのひいひいじいさんがジプシーにかけられた呪いによって、スタンリー家はいつも「まずいときに、まずいところに」居合わせては、辛酸をなめてきた。

砂漠のど真ん中、脱出不可能!「更正」のための穴を掘らされる毎日!
ところがここには、実はとんでもない謎が秘められていて…?

文句なし、ワクワク、スッキリ! 読後爽快感120%保証つきです。
ルイス・サッカーの独特のユーモア感。
過去と現在がからみあう、伏線の数々。
登場人物たちも、愛らしく、どんなにワルでもなんだか憎めないのです。

小学校高学年くらい~ 大人にももちろんオススメ。

続編(主人公は変わる)の「歩く」も期待をうらぎらない面白さ!

スタッフ えんや


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