ドローセルマイアーの人形劇場

ドローセルマイアーの人形劇場

ドローセルマイアーの人形劇場


斉藤 洋 作

 
人形劇と聞くだけで、幻想的な、どこか別の世界へ誘われてしまいそうな気持ちになるのは私だけでしょうか。この本もそんな思いを抱いて手にしました。最初にこの本の題名を見たのは、同じ斉藤洋さん作の「アルフレートの時計台」という本のあとがきでした。「アルフレートの時計台」を読んだ私は、そのあとがきで、先に書かれた「ドローセルマイアー人形劇場」と「アルフレートの時計台」の一部がつながっていることを知りました。そして「ドローセルマイアー人形劇場」と出会うのです。

部屋の中で所狭しと置かれていた人形たちも、幕が上がり、ドローセルマイアー氏の手にかかれば、まるで生きているかのように物語を演じ始めます。運命的にその世界に足を踏み入れたエルンストは、夢のような現実のようなあいまいな環境に身を置くことになります。

迷い見失っている時、それは運命に導かれ、行くべき道に迷い込んでいるのかも知れません。

 

スタッフ みか

 


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最後だとわかっていたなら

最後だとわかっていたなら

最後だとわかっていたなら


ノーマ コーネット マレック 作


あなたが眠りにつくのを見るのが
最後だとわかっていたら

わたしは
もっとちゃんとカバーをかけて
神様にその魂を守ってくださるように
祈っただろう

「Tomorrow Never Comes」という一編の詩が、1989年、息子を失ったひとりのアメリカ人女性によって書かれました。この詩は、9-11のテロの後、チェーンメールとなって広がっていきました。決して長くはない詩が、今日という日、今という瞬間が、ほんとうに「今」にしかないのだということを思い出させてくれます。ことばとして伝えることで、つながっていく、なにか。とてもまぶしくて、あたたかいもの…。

 

スタッフ えんや

 


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ゆきひらの話

ゆきひらの話

ゆきひらの話


安房直子 作
田中清代 絵

 
こんなに寒い時に、とてもあたたかいお話に出会うことができました。

ゆきひら、というお鍋があります。
風邪を引いて寝込んでしまったおばあさんと、戸棚の中に長い間しまってあったゆきひら鍋のお話。
ふっふとゆきひらの口からしろいゆげがのぼります。空からはほろほろと雪が舞います。やさしい擬音が心地よく胸の中に染みてきます。

ゆげのあたたかさと、りんごがコトコト煮える甘い香りで心の中がじんわりと満たされていきます。

小学生くらいからの読み物ですが、大人もじっくり味わいたい、そんな本です。

 

スタッフ みか

 


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土曜日のお裁縫

土曜日のお裁縫

土曜日のお裁縫


堀川 波 作

 
絵本作家・堀川波さんによる、手作りの本。
眺めているだけで、習ったことがなくても気負わず楽しく手作りができそうな気持ちになります。こんなのがあったらいいなと思うけれど、いざ探してみると具体的過ぎて理想的なものが売っていない時。かわいい布やリボン、ボタンを買った時。構えずに軽い気持ちで針と糸とお気に入りの布を手にできるようになりました。私はミシンを持っていないので、全て手縫い。厚い生地や大物はちょっと逃げ腰ですが、小物ならばチクチク手で縫うのも楽しい時間のひとつ。

イラストや作品の写真と文章に作り方がついているといった感じの構成なので、特に手作りがしたいわけではない時にも、かわいい作品や手作り小物にまつわる堀川さんの文章とイラストに癒されます。実際私も、何かを作るためにこの本を開くのではなく、ゆっくり眺めて楽しむために開くことのほうが多いです。「こんどこんなの作ってみようかなあ」「これがあったらカワイイなあ」「そういえば、あの布どこいったっけ…」いろいろなことを考えながらページをめくり、作ることを想像してはワクワクする日々です。

スタッフ みか

 


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細いワイヤーの上、ほくは自由だった

細いワイヤーの上、ほくは自由だった

綱渡りの男


モーディカイ・ガースティン 作
川本三郎 訳

 
世界貿易センタービルのあいだに綱をわたし、綱渡りをする…。
歩道橋も渡れないほど高所が苦手なわたしには想像するだにおそろしいのですが、マンハッタンで1974年にあった本当の話です。
男の名はフィリップ・プティ。大道芸人。
どうしてそんなことをしたくなったのだろう?
綱渡りしているときは、どんな気分なの?
好奇心にかられて、映画の「マン・オン・ワイアー」も観ましたが……やっぱりわかりません。
子どもが「あれやってみたい!」と思って、本当にやってみる。ただそれと同じで。
とはいえ、地上400メートルの綱を渡る実際の映像は、鳥肌が立つほど美しく、神秘的でした。
ふたつのビルには逮捕しにきた鈴なりの警官たち。でも綱の上までは誰も追いかけてはきません。
そうして一時間も彼は細い綱のうえで踊ったり、寝転がったりするのです。

自分が冒険できなくなっているとき、なにかしたいんだけれども怖いと感じているときにこの絵本を手にとります。
彼の居場所はたまたま地上400メートルの綱の上だったけれど、それぞれの人が、それぞれのやり方で、そんな場所をもつことができる。わたしにとって、小さな勇気をあたえてくれる絵本です。

 

スタッフ えんや

 


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三人の旅人たち--国語の教科書が好きでした。

三人の旅人たち--国語の教科書が好きでした。

三人の旅人たち


ジョーン・エイキン 作
ヤン・ピアンコフスキー 絵

 

小学生の頃、国語の教科書に載っていたお話です。教科書に載っているいろいろなお話が好きで何度も読み返したものですが、これは特にお気に入りでした。授業中にも教科書を前に戻っては読んでいました。お話も好きでしたが、小さな挿絵も好きでした。結局これが収録されている光村ライブラリー第14巻と、作者であるジョーン・エイキンの短編集、岩波書店「しずくの首飾り」という本の両方を購入し、挿絵が当時のままであることに喜びを感じながら今も楽しんでいます。(光村ライブラリー及びしずくの首飾りはお取り寄せになります。すみません…。)

「砂漠」という名前の駅に3人の男が住み、駅員として働いています。ほとんど客が降りることのないその駅で3人は変わり映えのしない毎日を送っていましたが、ある時それぞれ旅に出かけます。それぞれの行き先は?そして持ち帰ってきたものは?彼らがお互いに旅の話をし合えば、私の脳裏にもその情景がこと細かに描き出されます。

国語の教科書だけに、授業ではきっと、三人の心情や得たものなどを感想として持たなければならなかったのでしょうが、ただ単純に三人の旅の話が好きでした。


 
スタッフ みか

 


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ちいさなカエルたちの、おっきな友情

ちいさなカエルたちの、おっきな友情

ふたりはきょうも


アーノルド・ローベル 作
三木 卓 訳
文化出版局

 
ちかごろウチの子が寝る前に「読もうよ!」とせがむのは、賢くてやさしいかえるくんと、あたまのめぐりは悪い(ごめん!)が純粋ながまくんのおりなす、コミカルでハッピーな「ふたりは…」シリーズ。
息子はがまくんのセリフを全部ボクが読む!と、独り占め。「今日はかえっこしようよ」とでも言おうものなら、大粒の涙をこぼします!わたしもがまくんの役やりたい!!
でもオトナはがまんなのね……

こどもだけでなく大人のこころにも染みるふたりの友情は、ありふれているようで、けっしてあたりまえでないまぶしさをたたえています。
「ともだち」というものの奥深さを考えてしまうようなセリフにも出会います。
「ぼくはうれしいんだよ。とてもうれしいんだ。
 けさ めをさますと おひさまがてっていて、
 いいきもちだった。
 じぶんが 1ぴきの かえるだ ということが、
 いいきもちだった。
 そして きみという ともだちがいてね、
 それをおもって いいきもちだった。
 それで ひとりきりに なりたかったんだよ。」
            (「ひとりきり」より)

不思議なことに、誰かといっしょにいるときよりも、ひとりきりで誰かのことを考えているときのほうが、満たされた気持ちになるときがあります。
1ぴきの かえるで あること。
そのよろこびがあって、はじめて、ほかのひとにもよろこびをあたえられるんじゃないかな…。

アーノルド・ローベルのシンプルな英語もよいけれど、三木卓さんの訳って、すごくあったかくていいなっておもいました。
 
スタッフ えんや

 


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王国のない王女のおはなし

王国のない王女のおはなし

王国のない王女のおはなし


アーシュラ・ジョーンズ 文
サラ・ギブ 絵
BL出版

 

表紙の絵に惹かれ、タイトルが気になってこの本を手にしました。
薄いピンクとちりばめられた小さな花、女王のドレスがかわいらしい表紙を開くと、繊細な影絵を思わせる色使いのページが現れます。こんなにふんだんに甘い色を使った絵本なのに、どこか気品が感じられるのは、この影絵調の絵のためなのではないかと思いました。王国もなく、裕福でもない。それでもこの王女が王女と人々に知られるのはきっと漂う気品のせい。王女のおだやかな幸せが嬉しい、素敵な絵本。

スタッフ みか

 


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12の月たち

12の月たち
12の月たち

サムイル・マルシャーク 作
ダイアン・スタンレー 絵
評論社


有名な戯曲「森は生きている」の原案となったお話。私は「森は生きている」の方を最初に知り、後に絵本「12の月たち」が気になって手にしました。まま母とその娘に、二人と血のつながらないまま娘である少女が無理難題を言い渡される…昔話の定番のような出だしで始まります。厳しい冬、あたたかい春の描写が美しく、より寒く冷たく、そしてより温かく明るく、季節を感じることができます。花の甘い香りまでしてきそうです。

中学3年生の文化祭で、私のクラスは「森は生きている」の劇を発表しました。私は脚本と助監督を担当。脚本を文化祭用に書きおこすために、本を何度も読み返しました。だからこそ「森は生きている」とその元となった「12の月たち」への思い入れが強いのだと思います。

真冬に少女が摘んでこなければならなかった「マツユキソウ」とはどんな花なのか…。今はインターネットで手軽に調べられますが、当時は調べるというところに思い至らず、想像をふくらませていました。「スノードロップ」とも言うそうで、想像に近い形をしていました。花言葉は…今回初めて調べてみましたが、怖いほどにぴったりでドキドキしました。

スタッフ みか

 


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芋掘り絵本はたくさんあれど、これが金字塔(とおもう...)

芋掘り絵本はたくさんあれど、これが金字塔(とおもう...)

おおきなおおきなおいも 

赤羽末吉 作・絵
福音館書店


わたしのこども時代の本だが、わたしというよりは、ほとんど本を読まない弟が「唯一」ハマった本として、よくおぼえていた。とくにオナラで宇宙にとびあがっていくシーンにはガハガハわらいころげ、クールな姉(わたし)は「そこまで?」とチラ見。

ところが、母親になってもう一度読んでみて、すごい本だということを再発見した。こどもの好きなものがすべて見事に盛り込まれている。
芋掘り遠足が雨で延期になり、がっかりした子供たち。「せんせい おいもかくから かみちょうだい えのぐちょうだい ふでちょうだい」!
とてつもない大きさにふくれあがったおいもは、やがて、空想の世界から現実の世界へゆるやかにうつっていく。ほりだし、はこび、あそび、たべる。おならする、とびあがる、ゆらゆらお空の散歩。
赤羽さんの、手抜き?とおもえるほどの、洗練された落書き感もたまらない。えらびぬかれた言葉のひとつひとつが、声にだして読むとたのしい。

さあて、今日は本当の芋掘りにでかけます。ちいさなちいさなおいも、掘ってきま~す。

スタッフ えんや

 


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