秘密の花園

秘密の花園

秘密の花園

 

F.H.バーネット 作
猪熊葉子 訳
堀内誠一 画

 

長く読み継がれている、よく知られたお話。私が最初に出会ったのは上下巻にわかれた文庫でした。それから他の出版社や翻訳者、装丁の気に入ったもの…と何冊かの『秘密の花園』を手元に置いています。

名作と呼ばれるものや伝記物などでも、最近は、表紙の主人公の絵がとてもかわいらしくかっこよく描かれている本をよく目にします。個人的には表紙と内容のイメージが結びつかなかったりすることも。
一方、今回ここに掲載した「秘密の花園」は福音館文庫のもの。挿絵は「ぐるんぱ」や「たろう」の堀内誠一さん。長い物語の途中で時折入るモノクロの絵は、私のイメージから離れることなく、かといって私の気持ちを引っぱるでもなく、ほどよく物語へ導いてくれます。
しかし、手に取りやすいという意味では、入り口としてかわいらしい表紙というのもあり得るのでしょう。

とはいえ、表紙がどのようであったとしても、最初は主人公メリーの置かれている悲惨な状況にお話として楽しい部分がひとつもありません。しかし、周りの環境にひきずられ、大人の都合に振り回され、ただその渦中に「いる」だけだったメリーが自ら動き始めると、新しい環境、新たに出会う人々との関わりなど、メリーにとっても読者の私にとっても楽しみなことが増えていきます。やせっぽちで気むずかしく愛されることを知らなかったメリーが暮らすことになるのは、これまたひねくれもので気むずかしい叔父が住むヨークシャーのお屋敷。固く閉ざされたメリーの心の扉をヨークシャーの自然や生活、関わる人々が少しずつ溶かし、ほぐし、開いて行きます。

そしてなんとも魅力的で私たち(メリーたちや読者である私)を虜にするのが、閉ざされた庭の存在。メリーとともに庭への入り口を開きたくて、メリーを取り巻く人々に出会いたくて、メリーが見るもの聞くもの食べるものを一緒に感じたくて、何度となくこの本を手にとってしまうのです。

(スタッフ みか)